すぎはら眼科内科

High blood pressure高血圧について

高血圧とは?

高血圧は血液による血管壁への圧力が強い状態で、長期間続くと動脈に大きな負担をかけて動脈硬化を進行させます。日本には推定で4300万人もの高血圧症患者がいると考えられていますが、そのうち3100万人の方は不十分な治療をされている状態や放置をしている状態とされています。75歳以上の方は男性で74%、女性で77%の方が高血圧の状態で、年齢を重ねるとほぼ高血圧と診断されます。高血圧は症状がでることがほとんどなく、動脈硬化が知らず知らずに進行してしまい、心筋梗塞や脳卒中を起こしてはじめて高血圧であったことがわかる場合もあります。血圧を正常範囲に保つことは、長期的に生活の質を保つためにも重要ですし、将来の健康寿命にも大きく関わります。血圧が気になったら、早めにご相談ください。

高血圧の原因は?

血圧は心臓から送り出される血液の勢いと血管の柔軟性によって変わります。動脈硬化は高血圧を引き起こし、また高血圧が動脈硬化を進行させます。さらには脂質異常症や糖尿病を合併すると動脈硬化が進み血圧が上がりやすくなります。

塩分摂取過多は血液量を増やし、血圧を上昇させてしまいます。日本人は塩分感受性が高いことが知られており、感受性が高いにも関わらず塩分摂取過多の状態であることが以前より指摘されています。
2016年の調査では平均塩分摂取量は9.9gの結果で、健康日本21の政策には平均塩分摂取量8.0gを目標とすることされています。

その他の高血圧の原因には喫煙があげられます。喫煙は末梢血管を収縮させて動脈硬化が進行しやすくなり、ストレスでも血管が緊張するため血圧が上昇します。

近年、肥満症の方が増大傾向にありメタボの方は60歳以上の男性では30%を超えています。肥満そのものの改善は高血圧の改善にも直接つながります。当院では生活習慣病の予防および改善を目的としてシェイプアップ外来を開設しておりお気軽に受診をしてください。

高血圧の主な合併症は?

高血圧は血圧が高いだけでは症状はほとんどありません。しかし、下記の重大な合併症を起こすことがあります。症状がないうちにしっかり血圧を下げておくことが肝要です。
合併症は以下のような重要な合併症があげられます。

  • (脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、一過性脳虚血発作など)
  • 心臓(うっ血性心不全、冠状動脈硬化、心筋梗塞、狭心症など)
  • 腎臓(腎硬化症、腎不全など)
  • 動脈(大動脈瘤、大動脈解離、閉塞性動脈硬化症)

血圧の基準値は?

血圧は運動や緊張などによって大きく変化します。安静時でも診察室で計測した場合は高めに出やすい傾向があり、家庭で計測した血圧(家庭血圧)が最も信頼性が高いとされています。

血圧は年齢や病歴などによって血圧コントロールの目標値は変わってきます。高血圧の重症度に応じてⅠ度高血圧・Ⅱ度高血圧・Ⅲ度高血圧に分類されます。治療の際には、ご自分に合った目標値を決めて、その範囲になるようコントロールすることが重要です。

診療室血圧値の基準値

成人における正常血圧 120/80mmHg未満
高血圧の基準 140/90mmHg以上
正常高値高血圧 120~129/80未満mmHg
高値血圧 130~139/80~89mmHg

高血圧の分類

Ⅰ度高血圧 140~159/90~99mmHg
Ⅱ度高血圧 160~179/100~109mmHg
Ⅲ度高血圧 180/110mmHg以上

家庭血圧の測定手順

家庭血圧の測定は高血圧の診断と治療において非常に重要です。以下に家庭血圧を測定するための手順で特に重要と思われることを記載します。

  1. 測定する機器は上腕のものがよいです。
  2. 静かな環境で背もたれのある椅子に暫く安静にしたのち測定します。
  3. 朝は起床後1時間以内くらい 朝食前、朝服薬前、排尿後です。
  4. 2回測定してその平均値を血圧手帳に記載します。

朝夕の2回測定することが望ましいですがお忙しい場合は朝だけでも測定してください。もしも家庭血圧が135/85以上の場合は高血圧ですので内服薬が必要です。

白衣高血圧と仮面高血圧について

白衣高血圧とは高血圧の治療を未だ開始していない方において、診察室で測定した血圧が高血圧であっても、診察室以外では高血圧でない方です。白衣高血圧の場合は臓器への障害は軽度であり、予後も良好とされていますが、家庭血圧の継続した測定は必要です。一方で、診察室の血圧は正常であるにも関わらず、診察室以外で高血圧になる仮面高血圧の方もおられます。仮面高血圧は高血圧でない方の中にも10~15%程度潜んでいるといわれており、通常の高血圧の方と同様に臓器障害を引き起こすため注意が必要です。診断のためには24時間自由行動下血圧測定が必要です。当院でも施行することはできますのでお気軽にご相談ください。

時間血圧測定装置を取り付けた院長
時間血圧測定装置を取り付けた院長

二次性高血圧とは?

高血圧といわれた方の中には、実は他の疾患が原因で血圧が上昇している状態の方がおられ、これを二次性高血圧とよびます。高血圧患者さんの10人に1人程度が二次性高血圧であると言われていますが、実際に二次性高血圧と診断されている高血圧患者さんはそれよりも少ないといわれています。二次性高血圧には、原発性アルドステロン症や褐色細胞腫などの内分泌疾患、腎血管性高血圧などの血管疾患、睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)、薬剤誘発性高血圧などがあります。特に、若いのに高血圧と言われた方、複数の薬剤を内服しても良くならない高血圧(難治性高血圧)の方、電解質異常を伴う高血圧の方、臓器障害の進行が早い高血圧の方は一度精査をすることをお勧めします。当院では新規で高血圧と診断された方は原則として全員の方に二次性高血圧の採血検査および睡眠時無呼吸症候群の検査をすることにしております。

高血圧の治療とは?

高血圧の治療は、まずは食事や運動など生活習慣の改善が基本になります。生活習慣改善は他の生活習慣病や肥満の予防や改善にも役立ちます。後述する内服薬も治療には重要ですが、適切なコントロールのためにはベースとなる食事と運動が必要です。できるだけストレスのない方法で継続するようにしましょう。

食事で最も注意すべきは塩分摂取の制限です。日本人は塩分感受性が高いにも関わらず、塩分摂取過多な方が多いといわれています。日本高血圧学会では1日の塩分摂取量6g未満を推奨しています。1日に摂取する食品は素材自体に概ね3g程度の塩分が含まれているため、調味料としては1日4g程度しか使用できません。例えばたいへん美味しいチェーン店の牛丼並盛を摂取した場合は概ね5gもの塩分を摂取したことになってしまいます。1日6gを維持するためには、現代人には相当な薄味に感じられることを覚悟せねばなりません。旨味や香り、スパイス、酸味などを使うことで食事を楽しんで頂き減塩に努めてください。味覚はそのうち慣れます。ハムやソーセージ類、干物、佃煮や漬物、スナック菓子、インスタント食品などは使われている食塩の量がかなり多いため、食事と思わず嗜好品と捉える方がよいでしょう。当院では待合室に減塩レシピの書籍もおいておりますので是非参考にしてください。詳細はこちら

運動は高血圧治療にとって不可欠です。運動をせず内服薬のみで血圧を下げることはできません。おすすめは軽い有酸素運動(ウォーキング)を継続的に行うことです。毎朝5分~10分の運動でも効果は期待できます。運動は血圧だけでなく他の生活習慣病の改善や肥満の解消にもつながります。また、血流改善による新陳代謝の促進、筋肉量の増加など体全体の健康にも役立ちます。ウォーキングの際の上下運動そのものの刺激も血圧をさげる作用があります。マラソンをするほどでなくとも一日数分のウォーキングから初めてみましょう。運動を継続することで自分自身の体型が変化し美しくなることを実感してください。当院では下写真のIn Bodyを無料で測定して頂けます。筋肉量、脂肪量を数値として把握することができ運動効果を実感することができます。

喫煙をされておられる方は即座に禁煙しましょう。喫煙は末梢血管が収縮して動脈硬化が進みます。また、喫煙を続けていると、上述した塩分摂取制限や運動や内服薬の高血圧治療の効果を帳消しにしてしまいます。血圧が高い場合は即禁煙してください。禁煙によって呼吸器や循環器、末梢血管の深刻な疾患発症リスクも下げられます。

高血圧の治療薬とは?

高血圧の患者さんの多くは治療薬による治療を受けることになります。もちろん並行してベースとなる治療の生活習慣の改善も行う必要はありますが、生活習慣の改善を行うのみで血圧が下がってくるのを待っている間に、動脈硬化が進行し上述した心筋梗塞などの重要な合併症を引き起こしてはいけません。高血圧と診断されたら早めに治療薬を開始することもまた重要なことです。当院では高血圧の程度や合併症の有無や生活習慣などを総合的に判断したうえで、患者さん毎に最適なプランを考えています。高血圧の治療には定期的な通院が必須です。食事の状態や運動の習慣の状態、治療薬の内服状況などのコミュニケーションを取りながら治療を継続していきましょう。下記に代表的な治療薬を列挙します。

カルシウム拮抗薬

降圧効果が確実で安全性も高いため当院でも最も使っている降圧薬です。血管平滑筋細胞内へのカルシウムイオン流入を抑制し、血管拡張作用をもたらします。副作用には血管拡張による頭痛、反射性の頻脈、下肢浮腫、歯肉浮腫などがあります。

アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬

臓器保護作用があり心血管病、糖尿病性腎症にも効果的です。血圧を上げる作用のあるホルモンのアンジオテンシンⅡの作用を阻害します。副作用には高カリウム血症、血管浮腫があります。

アンギオテンシン変換酵素阻害薬

降圧作用とは独立して臓器保護作用があり心血管疾患を伴う高血圧に有用性が高いです。アンギオテンシン変換酵素を阻害して、アンジオテンシンⅡの産生を抑制します。副作用には空咳、高カリウム血症、血管浮腫があります。

選択的アルドステロン受容体拮抗薬

海外では心不全治療薬として使用されています。ミネラロコルチコイド受容体(MR)でアルドステロンの作用を選択的に阻害します。副作用には高カリウム血症があります。

利尿薬

腎臓からのナトリウム及び水排出を促進し循環血液量を減少させ血圧を下げます。浮腫の改善や心不全の改善にも有効です。副作用には耐糖能低下、高脂血症、高尿酸血症、低カリウム血症などあります。

β遮断薬

β1受容体を遮断し心排出量を低下させます。αβ遮断薬は血管拡張作用も有し降圧します。副作用には不眠、抑うつ、倦怠感、糖脂質代謝の悪化があります。


治療薬を内服することに副作用が気になり敬遠する方もおられます。しかし、早期に治療薬を使用した方たちと使用しなかった方たちを比べると、使用した方たちのほうが脳卒中や心臓病の発症リスクが軽減されることはすでに明らかとなっています。生活習慣を改善しながら、必要な治療薬を適切に内服して、よりよい人生を歩んでいきましょう。当院は高血圧でお悩みの方の力に必ずなります。

また、薬じゃない高血圧治療薬も当院は選択することも可能です。スマートフォンをお使いの方を対象に、高血圧治療補助アプリ(Cure App HT)をご利用いただいております。このアプリは、日々の血圧管理を簡単かつ効果的に行うことができます。選択肢の一つとしてご参考にしてください。

参考文献:

  • 高血圧ガイドライン2019