すぎはら眼科内科

Gastric-cancer胃癌にならないために

胃癌とは?

胃癌のイメージ

胃はみぞおちあたりにある袋状の器官で、摂取した食物を一定時間その中に留めてそれを消化するという働きがあります。

胃に食物が入ると蠕動運動が始まり、胃液が分泌され更なる蠕動運動によって食物は小さくすりつぶされます。胃液の中にある消化酵素によって蛋白質が分解され食物は粥状になり、幽門部を通って十二指腸に送り出されます。他にも胃には食物と一緒に取り込んでしまった細菌を胃酸で殺菌する働きや、悪い物質を嘔吐として出す働きもあります。

胃の壁は、内側から粘膜(粘膜、粘膜下層)、筋層、漿膜(漿膜下層、漿膜)という層になっていて、 そのうち最も内側を覆う粘膜の細胞が癌細胞になってしまい、増殖してしまうことで胃癌が発生します。より深く進むと漿膜の外側にまで及び、大腸や膵臓などの近くの臓器にまで広がることもあります。

胃癌の症状は?

早期の胃癌では自覚症状はほぼ無く、かなり進行していても症状が無いという場合もあります。よくみられる症状は、みぞおちの痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。

癌からの出血によって、吐血や下血などの症状があらわれることもあります。いずれも鮮やかな血ではなく、吐血は胃液によってコーヒーのような色に変化していたり、下血の場合も黒く変化していたりすること(タール便)もあります。

こうした症状は胃癌だけでなく、胃炎や胃潰瘍にもみられる症状であるため、症状だけでは胃癌と診断できません。進行した癌の場合は、体重減少や食事のつかえといった症状がみられることもあります。

胃癌の患者さんの数はどれくらい?生存率は?

胃癌のイメージ

胃癌と新たに診断される人は、2018年の日本のデータで126,009例です。部位別では全臓器癌中2位です。男女別では、男性では86,905例(全臓器癌中2位)、女性39,103例(全臓器癌中4位)です。

胃癌でお亡くなりになる人は2019年で、42,931人(男性28,043人、女性14,888人)です。5年生存率は66.6%(男性67.5%、女性64.6%)です。早期に発見することができれば96.7%と比較的高く、症状が出る前に早期に発見することが肝心といえます。

胃癌の分類と治療は?

胃壁深達度という、胃壁のどこまで癌細胞が広がっているかという視点での分類によって、早期胃癌または進行胃癌と区分されます。この分類は、リンパ節を介して他の部位で癌細胞が大きく増えていくリンパ節転移の率が大きく変わることから、とても重要な要素になります。

胃癌の治療方法には、内視鏡治療、手術、薬物療法などがあります。深達度、遠隔臓器への転移の有無、リンパ節転移の有無に応じた治療を検討していくことになります。

当院では胃癌の発生予防、胃癌の早期発見に努めます。治療な病変を発見した場合には総合病院へ速やかにご紹介をいたします。治療後の経過観察や補助治療は当院にて継続して行うことができます。

胃癌にならないためには?

ヘリコバクターピロリ菌のイメージ

胃癌にならないためには、ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)にご自身が感染しているかいないかを知ることが最初の一歩です。そして、もし感染していることが判明した場合には、確実に除菌しておくことが最も重要です。

世界保健機関(WHO)の専門組織「国際がん研究機関」は、全世界の胃がんの約8割はピロリ菌感染が原因だという報告書を2014年に発表しています。ピロリ菌は主に幼少期に感染し、長年胃に住みついており、炎症を胃に引き起こし胃癌を発生させてしまいます。さらには、胃潰瘍や胃炎、十二指腸潰瘍や鉄欠乏性貧血や血小板減少症などを引き起こすことが知られています。

日本では公衆衛生が改善しているため感染者は減少していますが、まだまだ日本はピロリ菌保有率の高い国です。人から人への感染も起こるため、両親や祖父母に胃癌や胃潰瘍になった経験がある場合、ご自身も感染している可能性が高いと言えます。

ピロリ菌の感染がなければ胃癌になる可能性はかなり抑えることができますが全くならないわけではありません。胃癌は早期発見をすることが治療に最も肝要であるため、除菌が完了した後でも定期的に胃カメラ検査を施行することが大事です。

ピロリ菌の除菌は?

健康保険を適用してピロリ菌の除菌療法を受けるには2つの条件があります。

一つは除菌開始日からさかのぼって6か月以内に胃カメラを受けていることです。ピロリ菌に感染していると胃癌をすでに発症している可能性があるため、除菌前に胃癌がないことを確認する必要性があるためです。

もう一つは、ピロリ菌感染をしていることを検査で確認することです。検査にはさまざまなもの(採血や呼気検査など)があり、必要に応じて組み合わせて検査を行います。自費健診でピロリ菌感染を診断のみされた場合には、胃カメラを受けなければ除菌療法に健康保険を適用することはできません。

除菌は1週間抗生剤を含んだ薬をしっかりと内服して頂きます。1週間内服することで除菌をすることができます。1週間内服したのちおよそ1か月間隔を空けて除菌ができたどうかの検査をします。この検査でピロリ菌がいなくなっておれば除菌成功です。

もし1回目で除菌ができなかった場合は2回目の除菌をすることができます。2回目までは健康保険が適応になります。一度除菌をしてしまっておけば、再度ピロリ菌に感染をすることはほぼないので、胃癌になってしまうという不安から生涯解放されます。

胃癌の治療後のイメージ