血液中には中性脂肪(トリグリセライド)、コレステロールといった脂質が含まれています。コレステロールはHDLコレステロール(善玉)、LDLコレステロール(悪玉)に分けられます。この中性脂肪やLDLコレステロールが多すぎる状態が続く状態は、動脈硬化発症や進行、血管の狭窄や閉塞のリスクになります。また、HDLコレステロールは血中の過剰な脂質を回収する役割を担っているため、これが少ない場合にも動脈効果の発症および進行のリスクが上昇します。
脂質異常症が続くと動脈硬化が進行をしてしまいます。動脈硬化が進行した場合には心筋梗塞や脳梗塞などの重大な合併症の発症のリスクになります。心臓や脳の血管障害による死亡は全体の死亡数の23%を占めており、がんによる死亡と匹敵します。
LDLコレステロール値が30mg/dl高くなると、心筋梗塞になる危険が男性で1.3倍増加し、女性で1.25倍増加してしまいます。脳梗塞(アテローム性血栓性脳梗塞)もLDLコレステロール値が増加すれば発症率も増加します。一方で、HDLコレステロール値が高い場合は心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクは低くなります。中性脂肪が高いことも、LDLコレステロールと同様に心筋梗塞や脳梗塞の発症のリスクとなります。LDL、中性脂肪は減らし、HDLは増やすようにすることが動脈硬化を抑制し心筋梗塞や脳梗塞の発症を避けることができます。
脂質異常症と診断される数値は以下のとおりです。
140㎎/dl以上 | 高LDLコレステロール血症 |
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120~139㎎/dl | 境界域高LDLコレステロール血症 |
40mg/dl未満 | 低HDLコレステロール血症 |
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140㎎/dl以上(空腹時採血) | 高トリグリセライド血症 |
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175㎎/dl以上(随時採血) | 高トリグリセライド血症 |
中性脂肪の基準値は空腹時と随時採血によって異なります。空腹時は概ね10時間以上の絶食を意味します。また採血前日に飲酒をしている場合は中性脂肪の上昇を遷延させることがあります。上記の診断基準は一般的なもので、既往歴に糖尿病や腎機能障害や心筋梗塞や脳梗塞をすでに発症したことがある場合や喫煙歴がある場合では、さらに厳密にチェックしておく必要があります。
脂質異常症の治療の基本は生活習慣の改善です。
などがあげられます。
上述の生活習慣の改善をしながら早めに内服薬を使用することをお勧めます。生活習慣の改善によりLDLコレステロールが低下するのを待っていても動脈硬化は進行してしまいます。早期に内服薬を開始し、早期に治療をしてしまうことがよりよい効果をもたらします。内服薬の代表的なものを示します。
体内でのコレステロールの合成を抑制します。LDLコレステロールを強力に低下させます。副作用に筋肉痛などあります。妊婦の方の内服はできません。
小腸でのコレステロールの吸収を阻害します。副作用に消化器症状があります。
体内でのコレステロールの合成を抑制することと中性脂肪の分解を促進する作用があります。副作用に筋肉痛などがあります。妊婦の方の内服はできません。
中性脂肪を低下させます。副作用に消化器症状があります。
内服薬は患者さんごと脂質の状態、既往歴の有無、体質、生活習慣などに応じて処方を行います。ご希望やご質問がありましたらなんでもお気軽にご相談ください。